大会報告と今後の活動について

サイエンス映像学会 会員の皆様

会長    林勝彦

既に事務局長から連絡がありましたとおり、7年目を迎えたSVSの大会は先月29日(土)に無事終了致しました。

三代目の会長として初めてのご挨拶も兼ねて今回の大会報告をさせて頂きます。

昨年の研究会同様、今回も老若男女50人程の参加を得てサイエンス映像に関する研究発表をはじめパネルディスカッション、ミニシンポジウム、学生制作のビデオ上映を含めて10件程のコパクトで充実した学会になったと思います。

報告者も老若男女とバラエティーに富む活発なもので、招待講演は元岩波映画取締役の牧衷氏による「映像によるサイエンスリテラシー」でした。この企画を提案した長谷川智子理事はこのサイエンス映像を活用し既に教育現場で利用してきました。岩波映画はサイエンスの基本を分かり易く映像化した古典的名作で、監修者には湯川秀樹博士ら一流の学者らが起用されています。今後、優先的にSVSの月例研究会やアーカイブ化を図れるよう検討を進めてまいりたいと思います。

「小学生を対象とした科学映画上映とものつくり~風に向かって走るヨット」を元工業高校教師で現在春日部市の事業「放課後子ども教室」理科担当の長島豊太氏が発表されました。

牧衷氏や長谷川理事らと共に「映像と科学教育の会」を続けてこられたメンバー、山本美知氏は「新座楽しい科学映画を見る会の5年~14分の哲学を伝えたくて」と題し報告を行いました。

同志社大学生命医科学部3年生の吉岡里沙氏は寺田寅彦の猫の縞模様研究にヒントを得て「ひび割れ現象」に着目、「自然の神秘に迫る~科学の面白さと美しさ」と題し報告しました。

北海道大学准教授の藤田良治理事は森林生態学などの研究に役立つ映像撮影の新兵器を開発した実績を基に「高等教育における視覚情報教材~”全天トレイル”の開発」と題し研究報告を行いました。

法政大学教授の藤田貢崇は、日本における科学コミュニケーションの課題について述べ、英国科学雑誌 Nature が手がけている動画配信による科学コミュニケーション手法について紹介を行いました。

佐藤成美理事の企画によるミニシンポジウム「サイエンス映像はエネルギー問題をどう捉えどう取り上げてきたか」ではNHKスペシャル(Nスペ)「エネルギーの奔流」を制作した上松圭ディレクターやNスペ「チェルノブイリ原発事故」を制作し西側ジャーナリストとして初めて原子炉近く迄潜入したNHKの室山哲也解説委員が原発、石炭、再生可能エネルギーの取材映像を見た後、温暖化との関連で今後のエネルギーの未来を議論しました。コーディネーターは小生が務めました。

さらに、坂井繁和理事、伊藤博文理事、村田真一理事による企画「映像紹介によるパネルディスカッション」では村田氏がプロデューサーを務めたNスペの人気番組「ホットスポット最後の楽園」を上映。動物の決定的瞬間や生態を記録するための特殊な撮影技法や、具体的な複数の技術や舞台裏を紹介しました。BBCがスタジオで再現シーンを撮影し英国で大問題になった事例にも触れ、メディアリテラシーとの関連も含め会場からも多数の質問が出るなど活発な議論が繰り広げられました。

また、大学非常勤講師として映像制作演習を小生と共に指導している村田豊彦理事は早稲田大学や武蔵野美術大学の学生が主体的に制作したサイエンス映像作品「より人らしいロボットへ~早稲田大学世界への挑戦」と「白い教科書(原発関連)」を紹介しました。SVSは当初より優れたサイエンス映像作品を制作した個人・グループなどを顕彰する「サイエンス映像賞」(仮)を設置する中期目標がありますが、学会の成熟度を見極めつつ今後も検討してゆきたいと思います。

これらもひとえに各理事の積極的な企画提案や、一般募集に応募して頂いた皆様と大会に参加していただいた皆々様の賜物と深く感謝いたします。

思い返せばサイエンス映像学会設立準備委員長としてヨチヨチ歩きを始めてから8年、初代会長の養老孟司氏、二代目会長の林成之氏の見事な采配により「サイエンス映像学会誌」では査読付論文のほか、Inside Report など、幅広い方々が投稿できる制度を確立しています。

この他、学会員が私的に保管しているサイエンス映像の収集・保存に努める他、著作権がクリアーできた映像はアーカイブ化しHPでの公開も図り「サイエンス映像部門」の充実を図ってまいりたいと思います。

すでにお知らせしておりますとおり、10月から月例研究会を開きます。地味ではあるものの着実に成果を重ねつつあるSVSですが、「継続は力なり」と今後ともさらなる進化を目指し会員の皆様と理事一同が協力し、社会貢献を図ってまいりたいと強く思います。

今後とも皆々様の御支援、御厚情を心よりお願い申し上げます。

第3代会長 林勝彦・経歴